シングルマザーは経済的に厳しい人が多く、「児童扶養手当」をもらっている人はたくさんいると思います。
子育てや家事をしながら働くのは大変ですし、手当としてお金がもらえるのは本当に助かりますよね。
「児童扶養手当」は、シンママ・シンパパなどのひとり親世帯に支給される手当のことです。
しかし、妊娠発覚した場合、「本当にひとり親なのか?」と疑われてしまいます。
ひとり親世帯のための制度なのに、もしひとり親でない世帯が受給していた場合、それは不正行為とみなされます。
不正行為をなくすために、児童扶養手当を受給中に妊娠すると、報告義務として届出が必要になります。
シングルマザーが妊娠して、再婚せずに出産しようとした場合、「児童扶養手当」について不安や疑問があると思います。
そこで今回は、未婚のまま出産を目指すシンママが「児童扶養手当」をもらい続けることができるのかについて紹介したいと思います。
合わせて、支給停止になった実例も紹介したいと思いますので、是非ご覧ください。
Contents
シンママが妊娠したら、児童扶養手当はもらえないの?

シンママが妊娠発覚したあと、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。
- 妊娠した子供の父親にあたる男性と、再婚する
- 妊娠した子供の父親にあたる男性と、再婚しない
「①妊娠した子供の父親にあたる男性と、再婚する」を選択した場合、ひとり親世帯ではなくなるため、児童扶養手当をもらうことはできなくなります。
「②妊娠した子供の父親にあたる男性と、再婚しない」を選択した場合、児童扶養手当をもらい続けることはできますが、それには条件があります。
結論から言うと、現状が事実婚として当てはまらなければ、児童扶養手当をもらうことができます。
これだけ聞くと、簡単じゃないかと思うかもしれませんが「事実婚ではない」と認めてもらうことは大変なことなのです。
まず、事実婚とは?
一般的な事実婚は、婚姻手続きをしていない男女が夫婦として生活している状態のことを言います。
「彼氏」なら当てはまらないから大丈夫と思われがちですが、そう簡単ではありません。
「児童扶養手当法」による「事実婚」の規定は少し異なります。
児童扶養手当法では、以下のどちらかに該当していると事実婚として扱われます。
①親族以外の異性と同居して、生計を共にしている。
②同居していない場合でも、頻繁に訪問をしたり、生計の補助がある。
シンママが妊娠した場合、相手の異性との関係が②の条件に当てはまる可能性が高いため、「事実婚状態」と思われてしまうのです。
当人たちの意識では、「彼氏と彼女」で、彼氏と結婚する意志がなかったとしてもです。
②の条件にある、「頻繁な訪問」については、詳しく「月何回から」と決まりがあるわけではありません。
ただ、様々な例を見ていると、月1回だと「頻繁」とみなされるようでした。
週末の度にお互いの家を行き来している場合は、それだけで「事実婚」と言われてしまうこともあるのです。
また、「生計の補助」は、生活費を受け取っているだけとは限りません。
食事を奢ってもらう行為やプレゼントをもらう行為なども、「生計の補助」に含まれることがあるようです。
普通に交際をしていたつもりでも、②の条件に当てはまってしまうことが多いのです。
どうやって「事実婚ではない」と証明すればいいの?
どういった場合が「事実婚」として見られるかについては、先ほどご紹介しました。
と思う人もいると思います。
でも、事実婚でないことを証明するのはものすごく大変で、難しいことです。
事実婚でないこと証明する時に必要な情報がこちらになります。
- 彼の年齢や職業、住所など
- 彼は既婚者か
- 彼との交際期間
- 交際に至った経緯
- 彼と会う頻度
- 彼から金銭的援助があったか
- 彼はお腹の子供について認知しているか
- 妊娠に至った経緯
- 妊娠に至るまでの彼とのやり取り
- なぜ彼と結婚しないのか etc・・・
誰がどうみても、超プライベートな質問ばかりで、見ていても気持ちがいいものではありません。
恐ろしいことに、これはほんの一部にすぎません。
実際に、役所を訪れたシンママたちは、こういった質問に答えるたびに、ここからまた掘り下げられた質問を受けていました。
中には、家に役所の人が訪問してきて、隅々まで家の中を調べられたシンママもいました。
妊娠中の、仕事と子育てをしながら空いた時間に役所に行き、こんなやり取りをしなければならないのです。
「事実婚ではありません」ということを証明するため、認めてもらうためだとしても苦しいですよね。
精神的な辛さから手続きに行かなくなり、受給を諦めるシンママがたくさんいるのです。
「児童扶養手当」について簡単にまとめました

きっと、この記事をご覧になっている方はシンママが多いでしょうから、「児童扶養手当」の受給について知っている人がほとんどだと思います。
しかし、そうでない人もいるでしょう。ここでは「児童扶養手当」について紹介したいと思います。
【児童扶養手当】目的
離婚によるひとり親世帯等、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与
するため、当該児童について手当を支給し、児童の福祉の増進を図る(平成22年8月より父子家庭も対象)。
児童扶養手当の目的は、「子供を養っているシンママ・シンパパなどが安心して生活できるようにするため」です。
シンママ・シンパパでなくても、祖父母や親族など、子供を養っている人も含まれます。
【児童扶養手当】対象
18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母、監護し、かつ生計を同じくする父又は養育する者(祖父母等)。
児童扶養手当の対象は、「0~18歳の子供を養っているシンママ・シンパパ(ひとり親)など」です。
再婚するとなると、「ひとり親」ではなくなるため、受給資格対象外となります。
事実婚の場合、実質的に「ひとり親」ではなくなるため、同じく対象外となります。
「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童」は、高校卒業までを意味しています。
【児童扶養手当】手当額(令和3年4月~)
全部支給 一部支給 月額(児童1人目) 43,160円 43,150円~10,180円 加算(児童2人目) 10,109円 10,180円~5,100円 (児童3人目以降につき1人) 6,110円 6,100円~3,060円
手当額は、所得に応じて、全部支給か一部支給か決められます。
一部支給の場合、これも所得に応じて約10円単位で、額が変動するそうです。
所得が多ければ多いほど、手当額は低くなるように作られています。
【児童扶養手当】手当を受ける資格がなくなる場合
(1) 手当を受けている父または母が婚姻したとき(婚姻届は出していなくても、異性との同居、お互いの家への頻繁な行き来かつ援助を受けている場合などを含みます)
(2) 対象児童を養育・監護しなくなったとき(児童の施設入所・里親委託・児童の婚姻など)
(3) 受給資格者または対象児童が死亡したとき
(4) 遺棄されていた児童の父または母が帰ってきたとき(安否を気遣う電話や手紙など連絡があった場合を含みます)
(5) 児童が父または母と生計を同じくするようになったとき
(6) 拘禁されていた父又は母が出所したとき
(7) 児童が18歳となり最初に迎える3月31日、または、一定の障害のある児童が20歳を迎えたとき
(8) その他支給要件に該当しなくなったとき
上記は、児童扶養手当を受ける資格がなくなる場合についての項目となります。
児童扶養手当を受給しているシンママが妊娠した場合、(1)に当てはまる可能性があります。
そのため、申請時には「受給中に妊娠した場合は、速やかに報告して下さい」と言われます。
妊娠後、報告せずに結婚・出産した場合や、事実婚でないと認めてもらえなかった場合、どうなると思いますか。
最悪の場合「不正受給」とみなされ、妊娠時まで遡り、不正に受給していた分を返還しなければいけません。
児童扶養手当の支給が停止となった実例

実際に、事実婚ではないにも関わらず、「事実婚だ」と言われて、児童扶養手当が支給停止になった例があります。
3つのうち2つは妊娠をきっかけとしたものではないですが、なかなか衝撃的だったので紹介させて下さい。
まずは、3つの実例を簡単に紹介します。
①シンママと子供がシェアハウスに住んでいたら、支給停止された。
②別れた元旦那が近くに住んでいるからと、支給を停止された。
③未婚のまま妊娠・出産後に支給を停止され、妊娠時からの支給分を返還しろと言われた。
これを見て、「これは停止になるだろう」と納得する人がどれくらいいるでしょうか。
きっと、「停止する必要がどこにあったんだろう?」と、疑問に思う人の方が多いと思います。
なぜ、支給停止になってしまったのか、その理由を一つずつ見ていきましょう。
【児童扶養手当の停止実例】①
シンママとその子供が、家賃節約のためにシェアハウスに住んでいたら、同じ家に独身男性がいるからと、支給停止された。
この例では、「男性と同居して、生計を共にしている可能性があり、事実婚が疑われる」という理由で、支給停止されてしまったのです。
共同スペースはあっても、それぞれの生活スペースは分けられているし、ましてや交際など一切しておらず、もちろん生計も別々だったそうです。
その後、事実確認をしてもらい、男性との友好関係はなかったとして、支給再開となったそうです。
【児童扶養手当の停止実例】②
数十年前に別れた元旦那がたまたま近くに住んでおり、「偽装結婚」を疑われて支給を停止された。
この例では、「近くに住んでいて頻回に行き来ができる状況であり、事実婚状態なのでは」という解釈から、支給停止となっていました。
実際は、離婚してからの元旦那との交流は養育費と子供の行き来のみで、男女間の接触はなかったらしいのです。
このシンママは、これが理由で十数年間ものあいだ児童扶養手当をもらっていなかったそうです。
ちなみに、面会や養育費は問題ないとのことでした。
子供の面会のために月1回訪問があったり、子供自身が親の家を頻繁に行き来する分には、問題ないようです。
また、養育費をもらっている場合、子供への援助であり生活のためではないという解釈にるため、「生計の援助」には含まれないようです。
【児童扶養手当の停止実例】③
彼との間に子供を授かったけど破局後に妊娠発覚し、未婚のまま2人目を出産した。その後、支給を停止され、妊娠時からの支給分を返還しろと言われた。
この例では、シンママが妊娠したことを、役所に報告していないようでした。
報告を怠ったことは良くないですが、彼との関係が終わったあとに妊娠が発覚しているため、もちろん訪問や援助はなかったはずです。
それでも、「未婚だとしても、妊娠・出産をしたなら、相手の訪問や金銭的援助があったはず。事実婚の疑いがある。」として、支給停止をしていました。
この場合、「事実婚でなかった証明」をしなければいけませんが、2人の子供を育てながらとなると、体力的にも精神的にも辛くなりそうですよね。
他にも、アパートに頻回に出入りする清掃員のおじさんを「頻繁に訪問する異性」とみなした事例もありました。
さらに、結婚せずに出産をすると言ったシンママに対して、レポートを書いてこいと言った事例もありました。
未婚のまま妊娠・出産をしたシンママの声

この制度を利用しながら、未婚のまま妊娠・出産を経験したシンママはたくさんいます。
もちろん、子供を授かるのは嬉しいことですが、後悔している人がほとんどです。
このように、児童扶養手当を受給中に妊娠し、辛い思いや後悔をしている人がたくさんいます。
事実婚でないのにも関わらず、窓口の対応に耐えられず、受給を諦めている人もいます。
「プライベートな内容なんだから、もう少し利用者の気持ちを考えてほしい」なんて声もありました。
悲しいことに、不正受給の例が事実としてあるのです。
役所としては、「本当に事実婚ではなく、手当を支給してもよい状況か」を正確に判断する必要があります。
そのため、「事実婚かもしれない」という可能性を潰していくためにも、情報が必要なのです。
それにしても、経験談として「役所とのやり取りが辛い」という声はたくさんありました…。
子供が増えれば、経済的にさらに厳しくなってしまうのに、結婚もできず、手当ももらえないとなると、シンママに負担が増えるばかりです。
これ以上負担を増やさないために、特に妊娠については、慎重に計画していきましょう。
やり取りに疑問や不安がある場合、母子家庭の支援団体や弁護士に相談することをおススメします。
まとめ
- 児童扶養手当はシンママ・シンパパのための制度なので、再婚するともらえなくなる。
- 未婚の場合は、「事実婚ではない」と認めてもらえれば児童扶養手当をもらうことができるが、とんでもなく苦労する。
- 児童扶養手当のために、事実婚ではないことを証明しようとした経験のあるシンママたちは、辛い思いをしている人が多く、妊娠の計画は慎重にすることが大事。
- 母子家庭の援助団体や弁護士に頼ることもできる。
未婚のまま出産を目指すシンママでも、児童扶養手当をもらうことはできます。
しかし、大変な思いをすることは、間違いありません。
今まさに妊娠中のシンママや、「児童扶養手当」について疑問があるシンママに参考になれば幸いです。